Thyroid甲状腺疾患とは
甲状腺疾患を発症すると、生きていくために重要なホルモンの分泌に異常が起こります。そして、「原因がわからないのにいつも体調が悪い」という事態に陥ります。検査しなければなかなか気づけないため、病気のサインを見過ごしているうちに悪化することも少なくありません。
甲状腺はのどぼとけのすぐ下にあって、蝶が羽根を開いたような形をしている臓器です。ここから「甲状腺ホルモン」を分泌することで身体の代謝機能をコントロールしているのです。甲状腺の分泌異常が出ると、脳・心臓・胃腸といった大切な器官の働きや交感神経などに不調が表れ、やがて日常生活に支障をきたします。
Symptoms甲状腺疾患の種類と
よくある症状
甲状腺疾患は、大きく分けて2種類あって、それぞれ症状が異なります。
過剰になる
「甲状腺機能亢進症」 2.ホルモンの合成・分泌が
低下する
「甲状腺機能低下症」
※このほか、甲状腺にしこりができる「腫瘍性(甲状腺腫瘍)」があり、良性と悪性にわけられます。悪性の場合は、甲状腺がんです。
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1ホルモンの合成・分泌が
過剰になる
「甲状腺機能亢進症」甲状腺ホルモンが過剰になり、全身の代謝が異常に高まる影響でさまざまな症状が表れます。代表的な疾患に「バセドウ病」が挙げられます。
よくある症状
首の腫れ体重が減る脈拍が速くなる、動悸、息切れ手足がふるえる、筋力が低下する異常に汗をかく、暑がりになった、微熱が続く排便回数が増えたイライラしやすい、眠れない、
疲れやすい眼球が飛び出してくる、
目が大きくなる月経不順バセドウ病
甲状腺ホルモンの分泌量が増えることなどを要因とし、体重の減少、動悸、息切れ、手のふるえ、汗かき、暑がり、筋力低下、疲れやすい、イライラして落ち着かないといった症状が表れます。見た目の特徴として、眼球が飛び出す、目が大きくなる、といった症状が知られていますが、必ず出るものではありません。女性の発症が多く、原因としては遺伝、ストレス、喫煙によるものと考えられています。
治療では、甲状腺ホルモンの過剰分泌の抑制をめざします。主に、内科的治療、外科的治療、アイソトープ治療の3つの方法があります。基本的に、飲み薬による治療を行いますが、患者さまの状態やライフスタイルを考慮しながら適切な方法を選び、組み合わせて治療を進めます。01.内科的治療(飲み薬)
甲状腺ホルモンの合成や分泌を抑制する「抗甲状腺薬」を服用します。
1~3カ月ほど毎日服用することで、甲状腺ホルモンの正常化を図ります。これで不快な症状が改善し、生活への支障が取り除かれるのですが、ここで薬の服用を止めてしまうと再発しますので注意が必要です。また、飲み薬による治療を始めて最初の3カ月くらいは薬の副作用のリスクがありますので、2週間ごとに血液検査を受けてください。
完治をめざすためには、飲み薬による治療を続けながら、定期的に甲状腺ホルモンの状態を検査します。最短でも2年ほどかけて、飲み薬の量を調整しながら治療を継続すると、甲状腺疾患を発症する前の状態に戻れる可能性があります。02.アイソトープ治療
アイソトープは、副作用の心配がなく、飲み薬による治療に比べると短期間でできる治療です。再発も少なくなります。ただし、代謝内科の専門クリニックなどの特別な施設でなければ受けられない治療です。
効果を実感しやすい方法なので、「長く飲み薬による治療を行っているのに再発を繰り返している」という方こそ検討してはいかがでしょうか。
治療の方法は、放射性ヨウ素の入ったカプセルを1回飲むだけです。甲状腺にはヨウ素を取り込む性質があるため、中から放射線の力で細胞を破壊し、甲状腺ホルモンの産生を抑えます。
効き目はゆっくりで、治療後2~6カ月で効果が現れてきます。治療後に甲状腺機能低下症になる場合がありますが効果が出ている証拠と考え、甲状腺ホルモン剤を服用して補っていきます。
放射線を使用する治療ですが、治療後半年以上になれば妊娠しても心配ありません。妊娠を予定している方は事前に医師に相談しましょう。妊婦・授乳婦の方や、原則として18歳以下の方は治療を受けることができません。また、眼球突出などの甲状腺眼症の症状が強い方もアイソトープ治療を受けられない場合がありますので、ご相談ください。03.外科的治療
手術を行い、甲状腺を切除もしくは全摘出する治療です。術後は、治療効果がスピーディーに出て甲状腺が正常になる上に、再発リスクが少ないという大きなメリットがあります。ただし、1週間程度の入院が必要で、治療後に甲状腺機能低下症になることもあります。甲状腺機能低下症になると甲状腺ホルモン剤を生涯飲み続けることになりますが、副作用の心配はほとんどないため、早く完治したいと望まれる方には推奨される治療法です。
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2ホルモンの合成・分泌が
低下する
「甲状腺機能低下症」甲状腺ホルモンが不足し、全身の代謝が異常に低下する影響でさまざまな症状が表れます。代表的な疾患に「橋本病」があります。
よくある症状
首の腫れ体重の増加、コレステロールの
増加無気力むくみやすい寒がり、冷え、汗が減った便秘、乾燥肌、薄毛いつも眠たい動作がにぶい、筋力低下生理不順橋本病
橋本病は、甲状腺に炎症が起こる自己免疫疾患の一種です。自己免疫疾患とは、細菌やウイルスなどの攻撃から身体を守るための免疫が何らかの異常によって、自分自身にダメージを与えてしまう病気です。
橋本病は女性に起こりやすく、成人女性の10人に1人は橋本病の症状があると言われています。その中の5分の1程度の人が、甲状腺ホルモンの産生が減少する甲状腺機能低下症になります。強いストレス・妊娠・出産などをきっかけに甲状腺機能低下症に陥ることが多いとされており、病気の症状に合わせて、適切な治療を選択する必要があります。01
甲状腺機能が
正常な場合甲状腺の機能低下がおきていない場合は、薬を飲む必要はありません。けれども突然病気が進行し、甲状腺の機能に異常が起きて甲状腺ホルモンが不足することがあります。例え症状がなくても、3~6カ月ごとに通院してトラブルが起きていないか確認する方がよいでしょう。
02
甲状腺機能が
低下している場合甲状腺ホルモン剤を飲み、不足した甲状腺ホルモンを補う必要があります。これは根本的な治療ではなく、補充するための治療ですので終わりはなく、継続して飲み続けることになります。
03
甲状腺の腫れや、
のどに違和感がある場合甲状腺ホルモン剤を飲んでホルモン不足を補い、経過観察を行います。腫れがあまりにも大きくなって気管を圧迫している場合は、外科手術で甲状腺を摘出することになります。
Examination当院の診察・検査内容
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問診・触診
問診では、お困りの症状についておうかがいします。その症状が始まったのはいつごろなのか、生活習慣やアレルギー疾患についてもお尋ねします。いずれも、甲状腺疾患の症状が出ているかを確認するために重要な情報です。些細なことでも、気になることがあれば何でもお話しください。また、ご家族に甲状腺疾患の患者さまがいらっしゃる場合も、必ずお伝えください。
甲状腺は、皮膚のうえから触っても状態がわかりやすい臓器です。触診を行い、腫れやしこりの有無を確認します。 -
ホルモン検査
血液検査を行い、甲状腺ホルモンの濃度を測定し、分泌量に異常がないか診断します。
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抗体検査
バセドウ病や橋本病は、免疫機能が暴走し、自分自身の甲状腺を異物とみなして攻撃する抗体がつくられることで発症します。病気の原因を確定するために、血液中の抗体検査を行います。
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超音波(エコー)検査
検査時間は10分~20分程度、甲状腺に超音波をあてるだけで診断できる簡単な検査です。甲状腺にできた腫れものの内部構造や、良性・悪性の診断を行います。
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穿刺吸引細胞診
甲状腺にできた腫れものが良性なのか、悪性のがんなのかを診断する検査です。極細の注射針を用いて細胞を採取し、顕微鏡で確認します。検査結果は数日以内にお知らせいたします。